2004年1月21日 (水)

北京NGOフォーラム報告(概要)

すでに当サイトの昨年12月24日付けの記事及びフォトアルバム(200311 Grassroots NGO Forum in Beijing及び200311 The 3rd NGO Forum in Beijing)で紹介した通り、昨年11月に北京で行われた二つNGOフォーラムに参加する機会を得た。この二つのNGOフォーラムとは、11月17日に中国国際科技会展中心で行われた「『ヨハネスブルグ+1』中国草の根環境NGOフォーラム」(主催:北京地球村、協賛:フォード財団)と、11月18〜20日に中国人民大学で行われた「第3回中国国際環境協力NGOフォーラム」(主催:中国人民大学、中国環境国際基金(IFCE)・北京地球村、実施:中国人民大学農業経済系、協賛:フォード財団・国際鶴基金[International Crane Foundation]・太平洋環境[Pacific Environment])である。この二つのNGOフォーラムはそれぞれ独立したものであるものの、二つとも主催団体となった北京地球村の呼びかけで参加した多くの草の根環境NGOにとっては、実質上一続きのイベントとなった。ここでは、この一連のフォーラムの概要を紹介したい。

まず17日に行われた草の根環境NGOによるフォーラムであるが、ここで「草の根NGO」について若干の解説をしておこう。北京地球村が編集した『草根集』という、中国の環境NGOを紹介した小冊子の扉によると、「草の根とは外来語で、大衆に根ざした民間組織を指す表現のひとつ」であるという。これは現在中国で優勢な政府の一部門から派生した社団のようないわゆる「官製NGO」(GONGO)とは区別して、有志のイニシアティブによる団体であることを強調した言い方でもある。『草根集』ではこうした環境NGOが26団体紹介されている。

このうち13団体が、2002年に南アフリカ共和国ヨハネスブルグで開かれた「持続可能な開発に関する世界サミット」(WSSD)に中国初の草の根NGO代表団として参加しており、その記録は小冊子『草根行』にまとめられている(ウェブ版はこちらを参照)。また、同年9月19~20日には、南京においてそのフォローアップ・ワークショップが北京地球村と江蘇緑色の友の共催で開かれ、30数団体が参加している。17日に行われたNGOフォーラムは、これら一連のWSSDに関するイベントから1年を経て、草の根環境NGOが行ってきた活動の成果や直面する課題について交流・討論を行おうとするものであった。

主催者側がまとめた議事録によると、今回のNGOフォーラムには国内73団体(うち北京28団体)、海外・国際15団体、その他専門家・研究者などあわせて約百数十名が参加しており(上記団体数には大学や政府系研究機関等も若干含む)、前年のフォローアップ・ワークショップに比べてかなり大規模なものとなっている。参加者の多くは北京地球村から直接招待された団体であるが(しかも会場や費用の制約などから、当初は原則1団体1名という話もあったとか)、私のように人づてにこの会のことを聞きつけて参加を申し込んだ人も少なくないようだ。中国における草の根環境NGOの盛り上がりを実感させられたものである。

会の進行は、北京地球村代表の廖暁義女史と香港地球の友代表の呉方笑薇女史の二人三脚で行われた。国連環境計画(UNEP)中国駐在事務所の夏氏、国家環境保護総局政策研究センターの裴暁菲博士、Conservation International代表の李氏、国務院法制弁公室の朱衛国氏などがそれぞれ講演を行った。国内外の来賓挨拶や研究者の講演などだけでなく、フロアーからの発言やグループ・ディスカッションの成果発表など出席者の積極的な参加の機会も確保されていた。また、中国の草の根環境NGOに資金助成をしている各団体から助成プログラムの紹介があった。この際にフロアーから連絡先に関する質問が繰り返され、主催者側が後日連絡簿をまとめて配布することを約束するという一幕もあった。さらに、各セッションの合間には参加者の歌や踊りを交えるなど、和やかな雰囲気づくりへの配慮も見られた。

一方、18~20日に人民大学で行われた国際環境NGOフォーラムは、中国国内の事前登録者だけでも240名を超えるさらに大規模な会であった。これは、2001年に引き続き北京で開かれた実質上2回目の国際環境NGOフォーラムであった。本会議は19日と20日の二日間で、18日は国内のNGO向けの小規模なワークショップがあった模様である(私が参加したのは本会議の二日間である)。本会議初日(19日)の午前は、来賓挨拶と基調講演、19日の午後と20日の午前は4つの分科会における報告と討論、そして20日午後は各分科会の総括と全体総括が行われた。19日午前に登壇した主な講演者は、自然の友会長の梁従誡氏、北京地球村代表の廖暁義女史、中国人民大学農業経済系の厳瑞珍教授、ワールドウォッチ研究所長(アメリカ)のレスター・ブラウン氏、ヴッターパール研究所(ドイツ)のウォルフガング・ザックス氏と実に多彩な顔ぶれであった。

また、分科会のテーマとしては、NGOの発展(能力建設・トレーニング、法律制度、資金調達)、農村環境問題・水問題、公衆参加とパートナーシップ、大学生の環境団体などがあった。このうち、私はNGOのセッションと参加・パートナーシップのセッションの一部に参加した。学生団体の分科会にかなり大きな部屋が割り当てられた以外(実際、全国各地から大勢の学生環境団体のメンバーが参加していた)、用意された部屋はどれも小さく、いつも超満員の様相を示していた。また、会全体を通してほとんど英語と中国語の逐次通訳で行われた。しかし、実際に通訳の必要な外国人は少数であり、ほとんどが国内の参加者であった。また、私が20日の午前に参加した分科会は、私を除いてすべて中国人であり、中国語のみで熱気のこもる議論が行われた。この分科会は、マスメディアの役割を主題としたものであり、環境問題に関する取材経験の豊富なマスメディアの関係者が現場での苦労を語り合うという大変興味深いものであった。国際環境NGOフォーラムではあったものの、国内の環境NGO・マスメディア関係者による非常に中身の濃い経験交流・意見交換がなされた場として強く印象に残ったものである。

以上、2003年11月に北京で行われた一連のNGOフォーラムについての概要と雑感である。また、より具体的な内容を踏まえた感想や考察については改めてまとめていきたい。

トラックバック

このページのトラックバックURL: http://bb.lekumo.jp/t/trackback/717066/34164920

北京NGOフォーラム報告(概要)を参照しているブログ:

コメント