2004年8月31日 (火)

環境損害賠償立法国際シンポジウムに参加

2004年8月20日から21日午前までの1日半の日程で、北京の日中友好環境保全センターを会場として行われた環境損害賠償立法国際シンポジウムに参加した(右のフォトアルバム200408 CLAPV Conference参照)。この国際シンポジウムは全国人民代表大会環境・資源保護委員会法案室と中国政法大学の共催のもと、フォード財団とオランダ国際開発協力機構(NOVIB)などから資金協力を得て、中国政法大学公害被害者法律援助センター(環境資源法研究・サービスセンター、CLAPV)が、実施したものである。このシンポジウムは今年3月に熊本学園大学で開かれた第2回環境被害救済(環境紛争処理)日中国際ワークショップにおいて全人代環境・資源保護委員会法案室主任(室長)の孫佑海氏が開催予告したものである。特徴としては、環境法及び周辺科学研究者、そして関連する行政、法曹界の実務家だけでなく、民法関係の研究者の参加が多数あったことであろう。また、オランダ、アメリカ、日本からも若干名の参加があり、日本からは立教大学淡路剛久教授、東京経済大学片岡直樹教授らが日本の経験に関する報告や中国の立法草案に対するコメントなどを行った。

会議後に配布された登録者名簿では80名以上が記載されているが実際に会場に来ていたのは50名程度ではないかと思われる。CLAPVの王燦発センター長によると、「もともと少人数でやる予定だったのが、関心が高く断り切れずに大きくなってしまった」ということのようである。2001年に北京で行った第1回環境紛争処理日中国際ワークショップでも、2002年10月に西安で行った中国西部地域環境訴訟解決困難問題ワークショップでも、同じような状況であった。それだけ中国において環境被害救済や環境紛争処理に対する関心が高く、そしてそうした分野に地道に取り組むCLAPVの活動に対して注目が集まっているということなのであろう。

会議は、王センター長による来賓紹介につづいて、全人代環境・資源保護委員会法案室副主任の蔡薇氏による開会挨拶で始まった。残念ながら法案室主任の孫氏は健康上の理由で会議に参加できなかった。蔡氏は環境法政策の執行状況に触れて、現地の住民の圧力に加えて、環境損害賠償に関する立法がなければ汚染企業は動かない、と立法の必要性を強調した。続いて、中国の環境法研究者及び最高人民法院法官(裁判官)からそれぞれの経験や研究を踏まえて環境損害賠償に関する立法の必要性に関する報告があり、出席者からも活発に質問・意見が出された。初日午後は、海外の経験ということで、日本、アメリカ、オランダからの報告があった。残念ながら時間切れで質疑応答は割愛された。

二日目は、環境行政官及び民法、民事訴訟法、環境法などの研究者から、環境損害賠償立法の要件をめぐって報告や意見が出された。国家環境保護総局政策法規司の別湊処長は、淮河など省域を超えた環境汚染紛争の解決の難しさを訴えるとともに、汚染企業の行為をただすには公益訴訟が必要ではないかという問題提起を行った。またCLAPVの馬燕副教授は、CLAPVのチームによる中華人民共和国環境損害賠償法の草案について説明を行った。そうして環境損害賠償立法をめぐる法理論的、法技術的な問題を中心に議論が行われたのであるが、特に、立法の範囲をどうするか、例えば行政による紛争処理を含むのかどうか、それから公益訴訟を認めるのか、認めるとしたらどのようにするのがよいか、またそれは今回の草案に盛り込むべきかどうか、などをめぐって活発な議論が行われた。淡路教授は、今回の議論では、日本が1970年代から現代に至るまで順次経験してきたことが一斉に出てきており、うまく整理する必要があろう、というコメントをした。

今回の会議では最初に会議資料が配付されたものの、実際の報告は必ずしもそれに依らない場合も少なくなく、また発言要旨すら活字資料として配付されなかったため、自分自身、すべての内容について正確に把握できたとはいえない。しかし、今回の会議を通して、CLAPVがこれまで地道に積み上げてきた環境汚染被害者に対する支援活動がCLAPVの研究チームによる立法草案の提案という形で新たな段階に入りつつあること、またこのような公開の場で多方面から立法草案について議論が行われたことは大変意義があると感じた。このような議論を一回きりにせずに、時機を見て公開の場で改めて開催されることを期待したい。そして今回参加できなかった人々も含めて、ウェブ上の掲示板などで議論を継続できるような仕掛けがほしいところである。

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One afternoon, I was in the backyard hanging the laundry when an old, tired-looking dog wandered into the yard. I could tell from his collar and well-fed belly that he had a home. But when I walked into the house, he followed me, sauntered down the hall and fell asleep in a corner. An hour later, he went to the door, and I let him out. The next day he was back. He resumed his position in the hallway and slept for an hour.
This continued for several weeks. Curious, I pinned a note to his collar: "Every afternoon your dog comes to my house for a nap. "
The next day he arrived with a different note pinned to his collar: "He lives in a home with ten children - he's trying to catch up on his sleep."

I cried from laughter
Sorry, if not left a message on Rules.